今回は「コメント評価システム」についてのお話です。

ソーシャルブックマークサイト「はてなブックマーク」(以下はてブ)におけるコメント評価システム「はてなスター」と、記事投稿サイト「スラッシュドットジャパン」(以下スラド)におけるコメント評価システム「モデレーション」を、両者のシステムを使う立場から比較してみました。

これはid:Imamura氏の「はてなは、ユーザーが☆レポートを楽しみにしていることに気づいていない説」を読んで、ずっと書こうとしていた事です。

いきなり結論

はて☆すた世界最強説。異論は認める。

注意書き

これはコメント評価システムの意義について論じるものであって、コンテンツの善し悪しや、各サイトのシステム自体については今回は基本的に考慮しない。

スラドの「モデレーション」システム

記事投稿サイトであるスラドでは、ストーリー(記事)に寄せられたコメントへの評価を「モデレーション」、評価する者を「モデレータ」と呼んでいる。

-1~5段階評価

コメントの初期スコア(評価)は、IDユーザー(通称ID持ち)は+1、匿名ユーザー(Anonymous Coward、通称AC)は0となっている。ここを基点に、数十人(?)のモデレータによってプラマイ評価される。スコアは-1,0,1,2,3,4,5の7段階となる。-1以下になる事はなく、5以上になる事もない。

評価ラベル

評価には必ず以下のようなラベルが付けられる。

  • プラスモデ(プラス評価ラベル)
    • すばらしい洞察
    • 興味深い
    • 参考になる
    • おもしろおかしい
  • マイナスモデ(マイナス評価ラベル)
    • オフトピック
    • フレームのもと
    • 荒し
    • 既出
    • 余計なもの

このうち「マイナスモデ」系のラベルがつけられると、その是非を巡ってよく諍いが起こっている。

フィルタリング

-1~5のスコアが与えられたコメントを、スラド閲覧者はフィルタリング設定で自由に読み方を制御できる。何でも全て読みたい人は「しきい値」を-1にすればいい。良質なコメントのみ読みたい人は、しきい値を2~5にしておけばいい(この辺りはスラド自体の仕組みとなるので蛇足か)。

モデレーション権

モデレーションを行うモデレータは、過去の行い(記事寄稿やコメント投稿)である程度実績のある者から流動的に選ばれる。これをユーザーは「モデ権が回ってくる」と表現する。モデ権が回ってくると、3日間に5つまでのコメントに評価を下せる。

ただし、最近はモデ権がすぐ回ってくるように感じる。自分以外にもそう感じる人は多いらしい。これはアクティブユーザー数の減少の証かも知れない。正直、モデレーションは疲れるので頻繁に回ってくると辛い。ちょっとした医師不足気分である。

これにより、一部の人間のフィーリングに偏った評価が下される傾向が強まっている可能性がある。

匿名評価

評価はID持ちのモデレータが行っているが、表には出てこない。これが「誰がこんなモデ付けたんだ!?」といったトラブルの一因となっている気がする。

メタモデレーション

先述の「恣意的なモデレーション」等、正当でない評価付けをしたユーザーの行為を評価する、バックグラウンドシステム。ここで低評価を受けたユーザーは、次回のモデレーション権が来にくくなる(という事になっているが)。

ただし一度ついてしまったモデレーションは覆らない。

また、こちらはモデレーション以上に頻繁に評価を求められる。正直、非常に疲れる。まじめにやってらんない。機能不全に陥っている可能性が高い。

評価の正当性

比較的少人数でシステムを回している節があるので、あるトピックに対して恣意的なモデレーションがつけられる場合がある。

評判

モデレーションシステム自体は非常によく考え抜かれたものであるが、ここまでの端々で記したような懸念があるため、システムへの不信感を訴える声が根強い。具体的には

等が挙げられる。

「はてなスター」システム

はてなスターは、Web上のあらゆる記事やコメントにスター(評価)を付けることが可能なシステムである。

はてなアイデア – スラッシュドットのモデレーションシステムのような第三者に回答の質を評価してもらう機能にて

「はてなスターで実装済み、とさせて頂きます」

という公式コメントが出ていることから、実質的にはてなスターがはてブでのモデレーションシステムであると言える。

無段階評価

青天井の評価システムのため、スターを100や200付けられる記事は珍しくない。先日は1記事で150万スター以上を獲得した少年が現れた。

マイナスの概念は存在しないため、ネガティブ評価は加えられない。そのためか、非公式ながら「はてなブラックスター」という仕組みが編み出されている。

なお、自分の付けたスターを取り下げることはできる。

ID名評価

はてなスターははてなIDを持ったユーザーなら誰でも付けられるが、匿名にする事はできない。各スターには必ずはてなIDが明記される。

評価の正当性

前述のように自IDを伴った評価であるため多少の自制効果はあろうが、誰でも無制限にスターを付けられるため、正当に高評価な場合もあれば、面白半分にスターが連発されている場合もある。また、スラドのような評価理由(面白いのか興味深いのか等)はさっぱり分からない。この辺りは文脈から判断する他ない。ただし、任意の文面を指定してスターを付ける事は可能になっている。

評判

当初、はてなスターは毀誉褒貶によって迎えられた。

しかし、いつの間にかはてなユーザーたちに自然に受け入れられていったように思う。このあたりの推移は興味深い。

両者の相違点

最大の違いとしては、スラドのモデレーションは、当然ながらスラド内の記事コメントしか評価できない。それに対し、はてなスターはWeb上のあらゆる記事を評価できる。

次に、スラドではモデレータによってのみ+5まで評価されるのに対し、はてなスターは誰でも無制限に評価できる。私の場合「はてなブックマーク – ネコがあなたを殺そうとしているサイン – GIGAZINE」で14スターを頂いた。これはスラドでは味わえなかった快感である。

逆に、ネガティブな評価を下したい場合、スラドではモデレータによって-1まで評価を下げられるのに対し、はてなスターは自分のスター以外は制御できない(ブラックスターを発動させた場合はこの限りではない)。これは「基本的に評価はポジティブに行使すべき」という思想によるものと思われる。スラドでのネガティブ評価の諍いを考えると、これは良い判断だったように思う。

また、スラドのモデレーションには評価ラベルが伴うが、はてなスターにはそういったものはない。

ソーシャルニュースサイトの場合

海外の大手ソーシャルニュースサイトDiggredditの場合

  • 記事コメントには一人プラマイ1票を投じることができる(キャンセル可)
  • 1コメントへの合計評価は上下限なし
  • 評価にスラドのようなラベル付けはない

というシステムになっている(これを仮にDigg方式と呼ぶ)。

日本のソーシャルニュースサイトnewsingChoixの場合

  • そもそも記事へのコメントには評価不可

となっている。

総評

ここまでで、記事に対するコメントの評価システムは大まかに

  • モデレーション方式
  • Digg方式
  • はてなスター方式

の3つに分類できる。

ネガティブコメントを沈め(消去はしない)、良質なコメントを浮上させる、スラドのモデレーションシステムは、うまく運用されれば素晴らしいのだが、肝心のモデレータ・メタモデレータが機能不全に陥りがちで、理想的な運用は難しい。

Digg方式は、モデレーション方式よりもシンプルかつスムースに機能しているように見える。評価は全て参加ユーザーに委ねられるため、特定ユーザーへの負担や偏りがない。評価ラベルはつかないが、文脈を読めばなんとかなる。

はてなスターは「あらゆる記事・コメントに、ID明示でポジティブにのみ、無制限に評価できる」という、非常にユニークなシステムである。ただし現在のはてブコメント欄は連続した議論の場としては向いておらず(ユーザーは↑↓指定やIDコール等でカバーしている)、はてなスター自体もコメント欄とは連動していない。

はてブコメント欄に関しては、せめてコメントの並び順を「時系列順」と「はてなスター評価順」で切り替えられるようにしてはどうかと思っていたのだが、これに関して昨年12月の第2回SBM研究会で質問したところ、はてなのid:naoya 氏から「近いうちに実装予定」といったコメントを頂いており、期待している(参考:第2回SBM研究会 Twitterログ)。

以上を踏まえると、議論する場での安定した評価システムとしてはDigg方式に分がある。しかし、ミリオンスターユーザーを生み出たり、評価される側に喜びを与えてくれる等、最も可能性を秘めているという意味で、はてなスターが現時点で世界最強のコメント評価システムであるとしたい。といってもDiggやredditは使い込んでおらず、世界の全サービスを把握しているわけでもないので、諸兄より意見、異論、情報等を求めたい。

おわりに

各種評価システムについて比較・考察してみました。いかがだったでしょうか?

そのうちにソーシャルニュースサイト(スラドやはてブ含む)そのものについても考察してみたいと思います。気長に待ってね!

参考資料

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